借地権付き土地はなぜ安い?所有権との違いと買う前の注意点

2026年8月17日

借地権付き土地はなぜ安い?所有権との違いと買う前の注意点

目次

ポータルサイトや不動産広告を眺めていると、駅近くの物件で周辺相場よりもかなり安い物件を見つけて驚いた経験はありませんか。しかし、詳しく確認すると「借地権付き」と記載されている場合があります。

本記事では、借地権付きの土地が安い理由、借地権と所有権との違いについて解説します。購入してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、ぜひ最後まで読んでください。

借地権付き土地とは?土地を所有するのではなく借りる権利

不動産を探しているとよく目にする借地権(しゃくちけん)ですが、言葉のイメージだけで理解したつもりになっていると、後から予期せぬトラブルに直面する可能性があります。まずは、借地権の構造がどのようになっているのか、根本的な仕組みから理解していきましょう。

建物を所有するために土地を借りる権利

借地権とは、文字通り「他人の土地の上に自分の建物を建てて所有するために、その土地を有料で借りる権利」のことを指します。法律(借地借家法)で定められた正規の権利であり、決して怪しいものではありません。

通常、一戸建てを購入する場合は土地と建物の両方を所有権として買い取ります。しかし借地権付き物件の場合、土地を買うわけではないため、購入時の支払額に土地本来の所有権価格が含まれません。

そのため、土地の権利金や保証金といった名目で支払う金額を考慮しても、周辺にある一般的な所有権付き物件の相場と比べて約60%〜80%程度という格安な価格設定になります。

土地の所有者は地主、建物の所有者は借地人という形になる

借地権付き物件の特徴は、土地と建物の所有者が別になるという点です。権利関係をわかりやすく整理すると、以下のようになります。

・土地の所有者: 地主(土地の所有権を持ち、借地人から毎月地代を受け取る)

・建物の所有者: 買主/借地人(建物の所有権を持ち、自分の名義で登記を行う)

つまり、借地権付き物件は、「マイホームという建物自体は自分名義の所有物だが、それが建っている敷地はあくまで他人の所有物である」という特殊な構造です。

見た目は普通の一戸建てと変わりませんが、根底には「他人の土地を借りている」という事実が存在することを理解しておきましょう。

所有権付き土地との違い

借地権付き土地と、所有権付き土地とでは、所有の形態だけでなく将来かかる費用や自由度にも大きな差が生じます。

所有権は土地そのものを持つ

不動産における所有権は、「土地そのものを自分の資産として所有する権利」です。法令の制限内であれば、土地をどのように使おうと所有者の自由であり、誰かの許可を得る必要はありません。

また、所有権には有効期限という概念が存在しません。自身が生きている間はもちろんのこと、子供や孫の世代へそのまま相続させて残すことができます。売却や賃貸に出す際も、自分の意志だけで判断できるため、資産としての流動性や自由度が高く、自由な活用が保証されています。

借地権は土地を使う権利を持つ

一方で借地権は、「土地を借りて使う権利」にとどまります。土地の所有権は地主のもとにあるため、自分の土地であるかのように完全に自由に扱うことはできません。

また、借りている権利である以上、契約期間が存在します。普通借地権の当初存続期間は原則30年以上、一般定期借地権は50年以上など、借地権の種類ごとに期間の考え方が異なります。

更新可能な契約タイプもありますが、期間が来れば契約の更新手続きが必要となり、契約内容によっては将来的に土地を更地にして地主に返還しなければならないケースもあります。

固定資産税、地代、更新料の考え方が違う

所有権と借地権では、発生する費用の種類や支払い先が大きく異なります。以下の表で主な違いを確認してみましょう。

費用項目:土地の固定資産税・都市計画税 / 所有権付き土地:自分が支払う(所有者として納税) / 借地権付き土地:地主が支払う(借地人は直接支払わない)

費用項目:毎月の地代 / 所有権付き土地:なし / 借地権付き土地:地主に毎月支払う

費用項目:契約更新料・各種承諾料 / 所有権付き土地:なし / 借地権付き土地:更新時や売却・改築時に支払う場合がある

このように、借地権では土地の固定資産税を払う必要がない反面、地代という継続的な支払いがあります。また、契約の更新期には更新料が発生します。

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借地権付き土地が安く見える理由

ポータルサイトなどで見かける借地権物件は、近隣の相場と比べて明らかにリーズナブルに見えます。そこにはお得感だけではない潜在的なコストが隠れています。

土地そのものを買うわけではない

物件の販売価格が安く設定されている理由は、繰り返しになりますが「土地そのものの所有権を購入しているわけではないから」です。

売買契約の対象となっている価格には、建物の価格と土地を利用する権利(借地権)の価格しか含まれていません。土地という高額な資産そのものを買い取るわけではないため、土地の評価額がそのまま販売価格に反映されません。

結果として、同じエリアにある所有権付きの物件と比較した際に、約6〜8割程度の価格帯で購入できるように見える仕組みになっています。

地代や更新料など将来コストがある

一見すると安く見える借地権物件ですが、購入後の費用を含めて考えると印象が変わってきます。

まず、土地を借り続ける以上、毎月継続して地代を支払う必要があります。地代の相場は地域や用途によって様々ですが、一般的にはその土地にかかる固定資産税・都市計画税の数倍程度が一つの目安とされています。

さらに、契約更新の節目には、契約内容や地域慣習によって更新料の一括支払いを求められるケースがあります。初期費用が安くても、数十年先のトータルコストで計算すると格安とは言い切れない場合があります。

建て替え・売却・譲渡に地主の承諾が必要な場合がある

借地権付きの家は、建物が古くなったからといって自分の判断だけで自由に建て替えることができません。建物の増改築や再建築(建て替え)を行う際には、契約内容によってはあらかじめ地主の書面承諾を得る必要があり、その際に建替承諾料という費用が発生する場合があります。

さらに、将来的に家を手放して第三者に売却(譲渡)しようとする場合にも、地主の承諾や譲渡承諾料(名義変更料)が必要になる場合があります。万が一地主との関係が悪化して承諾が得られないリスクや、トラブルへ発展する懸念も価格に織り込まれているため、販売価格が安くなっている側面があります。

住宅ローンや売却時の買い手が限られることがある

購入時のハードルや将来の出口戦略における難易度の高さも、価格が安く抑えられている要因の一つです。

・住宅ローンの審査制限:金融機関は融資の際、対象の土地と建物に担保権を設定します。しかし借地権の場合、土地に担保を設定できないため担保評価が低くなりやすく、取り扱いをしてくれない銀行があったり、融資限度額が低く抑えられたりすることがあります

・売却時の需要の偏り:「毎月の地代がかかる」「所有権ではない」という点を気にする買主が多いため、将来売却しようとした際に買い手が限定され、売却までに長期間を要したり、価格を相当下げざるを得なかったりするリスクがあります

借地権付きでも検討しやすいケース

デメリットや制約ばかりが目につきやすい借地権付き土地ですが、決して買ってはいけないわけではありません。自分のライフスタイルや将来の計画と条件が合致していれば、コストパフォーマンスの高い選択肢となり得ます。

立地を優先したい

不動産購入で、何よりも立地や利便性を最優先したいと考えている人にとって、借地権付き土地は適した選択肢になります。

たとえば、都心の主要駅近くや人気の高級住宅街、学区が良いエリアなどは、土地の所有権価格が高騰しており、通常の所有権物件では手が出ないことが多くなっています。

しかし、借地権物件であれば、予算内で憧れの人気エリアや駅近の好立地にマイホームを持てる可能性がぐっと高まります。「通勤・通学の時間を短縮したい」「生活利便性の高い街に住みたい」というニーズを叶えられる有効な選択肢になります。

初期費用を抑えたい

購入時のまとまった資金調達を抑えたい場合や、自己資金(頭金)にあまり余裕がない場合にも、借地権物件は適しています。

土地の購入費用を大幅にカットできるため、物件の総支払額を抑えることができます。浮いた予算を建物の建築費やリノベーション費用に充てることで、「土地は借り物だが、建物は最高品質の設備やこだわりの注文住宅にする」という柔軟な資金配分も可能になります。

また、新築購入時の初期借入額を減らして、月々の住宅ローン返済負担を軽減したい人にも向いています。

長く住む前提で契約内容に納得できる

将来的に家を売却して住み替える予定がなく、自分たちの代で長く住み続けると割り切っている人にとっても、借地権付き土地はメリットが大きいです。

売却を前提としないのであれば、「買い手がつきにくい」「売却価格が下がる」といった将来の流動性リスクを過度に心配する必要がありません。

地主との契約内容や毎月の地代、更新時の条件にしっかりと納得し、一代限りの住まいとして住む、あるいは子供へ引き継ぐ具体的なプランが描けているのであれば、所有権にこだわる必要性は薄いと言えるでしょう。

契約前に確認したいポイント

借地権付き物件の購入を具体的に検討する際は、契約を締結する前に確認しておくべきポイントがいくつかあります。後のトラブルを防ぐためにも、必ず以下の4点を確認してください。

借地権の種類と残存期間

ひとくちに借地権と言っても、適用される法律や時代によって権利の種類が異なります。

・旧法借地権: 1992年8月より前に設定された権利。借地人の立場が非常に強く保護されており、地主に正当な理由がない限り基本的に更新が可能で、半永久的に住み続けられるケースが多いです

・普通借地権(新法): 1992年8月以降の権利。更新は可能ですが、旧法に比べると正当事由の解釈がやや緩和されています

・定期借地権: 一般定期借地権では契約期間が50年以上とされ、期間満了時に契約が終了し、原則として更新はできません。更地にして地主に返還する取り決めが多いため、特に残存期間が何年残っているかの確認が必要です

地代、更新料、承諾料

契約期間中に発生するあらゆる費用について、具体的な金額と取り決めを事前に把握しておくことが重要です。

毎月支払う地代の額はもちろんですが、「将来的に地代がどのような基準やペースで値上げされる可能性があるか」という改定ルールも確認しましょう。

また、契約更新時に支払う更新料の算出方法(借地権価格の〇%など)や、建物の名義変更時・建て替え時に必要となる各種承諾料の基準についても、契約書面に明確に記載されているかをチェックしてください。

建て替え・増改築・売却時のルール

将来的に家屋をリフォーム・リノベーションしたり、建て替えたり、あるいは売却したりする際の手続きとルールを確認します。

契約内容によっては増改築禁止特約などが盛り込まれているケースもあり、地主の承諾が得られないと大規模な修繕すらできないリスクがあります。

万が一、地主と協議がまとまらなかった場合の対処法(裁判所による許可代行制度等)が存在するかどうかも確認が必要です。また、地主が「個人の地主」か「寺社仏閣・法人」かによっても、将来の交渉のしやすさや柔軟性が異なります。

金融機関の融資条件

借地権物件を購入する際は、売買契約を結ぶ前に、利用を予定している金融機関での事前審査を必ず行ってください。

借地権に対する融資は金融機関によって大きく異なり、取り扱い自体を断られるケースや、担保評価の兼ね合いで希望額に届かないケースがあります。

さらに、多くの金融機関では住宅ローンの融資条件として「地主から指定の承諾書に署名・捺印をもらうこと」を必須としています。地主が承諾書への捺印を拒否するとローンが組めなくなるため、事前に仲介業者を通じて地主の意向を確認してもらうことが大切です。

まとめ

借地権付き土地が相場より大幅に安い理由は、ただ土地の所有権を購入していないからだけではありません。毎月の地代や将来の更新料といった継続的なコストが発生することや、建て替え・売却時に地主の承諾が必要になるという制限やリスクが考慮されているためです。

しかし、「立地を最優先したい」「初期コストを抑えて建物にお金をかけたい」「売却の予定はなく長く住み続ける」という明確な意図がある人にとっては、借地権付き土地は好立地で安く住める選択肢の一つとなります。

購入を決定する際は、借地権の種類(旧法・新法・定期)や残存期間、地代や承諾料の取り決めやローンの利用可否などを念入りに確認し、納得した上で契約を進めましょう。

また、専門的な権利関係や将来の資金計画に不安がある場合は、自分一人で判断せず、内容に応じて適切な専門窓口へ相談することをおすすめします。

トチシルとは

公式参照元

国税庁 No.4611 借地権の評価:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4611.htm

借地借家法 e-Gov法令検索:https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090

国土交通省 不動産取引に関するお知らせ:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html