墨田区の水害リスク|荒川・高潮・雨水出水を住まい選びで比較

2026年10月1日

墨田区の水害リスク|荒川・高潮・雨水出水を住まい選びで比較

目次

墨田区の水害リスクとは

東京23区の江東5区に位置する墨田区では、水害リスクを無視した住まい選びは適切ではありません。そのため、水害リスク想定を入念に確認して利便性や住居費などの条件と比較することが重要です。このとき知っておきたいポイントを本記事でみていきます。

水害は一つのハザードマップだけでは判断できない

墨田区では、大規模な被害が想定される条件で荒川が氾濫した場合の浸水被害を想定しています。しかし、荒川の洪水とは別に高潮と雨水出水(内水氾濫)も区別して確認する必要があります。墨田区公式水害ハザードマップも、現在3種類の水害を区別しています。想定される浸水範囲、浸水深、継続時間が異なるため、それぞれ想定される被害や避難方法の比較が必要だからです。とはいえ、墨田区内どこでも深く浸水するとは限らず、単に低地だから住めないと判断せずに、区→駅→町丁目→候補物件と確認単位を絞りつつ住まい選びを検討する方法をこれから解説します。

ゼロメートル地帯だけで安全・危険を判断しない

墨田区は、隅田川と荒川に挟まれた江東デルタ地帯の一部に位置し、「起伏の少ない平坦な低地」とされています。国土地理院は墨田区周辺のデジタル標高地形図も公表しています。ただし、「ゼロメートル地帯」の印象だけで物件を評価せずに、先に各水害ハザードマップで候補地点の被害想定を確認し、その背景を理解する材料として地形を見るのが適切です。

荒川・隅田川・高潮・雨水出水を分けて確認する

同じ「浸水」でも各水害では発生原因も確認する地図も下表のように異なります。

荒川の洪水は浸水深と継続時間を見る

荒川流域で72時間に632mmという想定最大規模の豪雨が発生したときに、墨田区内では南西部から荒川に近い北東部にかけて浸水が深くなる傾向があります。区北部の多くで3〜5m、最深部6mを超える想定であり、原則、区外の浸水想定区域外に避難の必要があり、浸水地域の多くでは2週間以上水に浸かる想定のため浸水想定期間も確認します。ただし、高層階なら安心とはせずに、浸水期間中に建物の電気・給水・エレベーター等が使えなければ不便になりますので、物件の建物設備の確認が必要です。

高潮は河川洪水とは別の想定として確認する

高潮は、台風などによる気圧低下や強風で海面が上昇し、海岸や河川を通じて浸水する災害です。東京都は2024年12月に東京湾沿岸の高潮浸水想定区域図を改定し、想定最大規模の高潮について浸水深と浸水継続時間を示しています。墨田区の現行ハザードマップも東京都の想定を反映しているため、荒川洪水の地図では高潮の被害を判断できません。高潮の浸水深と浸水が続く時間も確認しましょう。

大雨では雨水出水も確認する

東京都は水防法に基づいて2026年3月に墨田区を含む「江東内部河川流域」と「隅田川及び新河岸川流域」へ新たな「雨水出水浸水想定区域」を指定しました。しかし、墨田区の現行ハザードマップに掲載される雨水出水図は従来の「浸水予想区域図」によります。最新の状況は東京都の2026年資料も参照し、区のハザードマップと同一資料の単純な新旧版とは扱わないようにします。想定最大規模降雨は、いずれも「1時間153mm・24時間690mm」と、流域への降雨で起こる荒川の洪水とは原因が異なり、雨水出水は、区内や周辺での降雨が下水道などの排水能力を超えてあふれる水害です。河川から離れた場所でも発生し得ます。

「隅田川」という名前だけで洪水と内水を混同しない

「隅田川及び新河岸川流域雨水出水浸水想定区域図」という資料が扱うのは河川の洪水ではなく雨水出水です。墨田区の現行水害ハザードマップで洪水として掲載されているのは「荒川が氾濫した場合」の想定です。資料名の「隅田川」で判断せず、「洪水」「雨水出水」のどちらの図なのかを読み分けましょう。

錦糸町・押上・曳舟・両国周辺を比べる視点

駅ではなく候補住所をハザードマップに重ねる

墨田区内では錦糸町・押上・曳舟・両国が主要駅に挙げられますが、同じ駅に近い物件でも、駅からの方向や住所が違えば水害想定は変わりますので、駅名だけで安全・危険の順序をつけるのは適切ではありません。代わりに、各候補物件の住所を以下の同じ指標で比較します。

ハザードマップ:

・荒川洪水の浸水深

荒川洪水の浸水継続時間

・高潮の浸水深

・高潮の浸水継続時間

・雨水出水の想定

・地形・標高

物件側:

・建物階数

避難先・避難経路

地形はハザードマップを補助する材料として使う

国土地理院のデジタル標高地形図では、墨田区を含む江東5区の標高差を面的に確認できます。錦糸町・押上・曳舟・両国周辺を比べる場合も、先に各水害の地図へ候補物件のおおむねの位置を重ね、洪水・高潮では浸水継続時間も確認し、雨水出水では浸水範囲・深さを確認して、標高や低地の広がりから「なぜその想定なのか」を補足して理解します。地形だけで居住可否を決める材料にはしません。

広域避難と垂直避難を分けて考える

荒川氾濫のような大規模水害では、墨田区は原則として江東5区外で浸水区域外への広域避難を案内しています。江東5区全体では被災者人口が約250万人に及び、多くの地域で2週間以上の浸水が想定されているためです。一方、避難開始が遅れた段階では遠距離の移動が危険になるので、区は浸水想定より高い場所(最寄りの建物、自宅の居室)への緊急的な避難も示しています。住まい選びでは「高い階へ行けるか」だけでなく、早い段階で区外へ移動できて、ハザードマップに示されたアンダーパスなど危険箇所を避難経路が通るかも確認します。

物件選びで確認する設備と管理

居室の階数だけでは判断しない

浸水深より高い階に居室があっても、電気設備が浸水すれば停電・断水やエレベーター停止が長引く可能性があります。候補物件では、不動産会社や管理会社に次の項目を確認できると、ハザードマップ上の想定を実際の生活への影響に置き換えやすくなります。

・居室の階数と、地下・半地下部分の有無

・受変電設備、給水ポンプ、非常用電源の設置場所

・止水板など建物への浸水を軽減する設備

・エレベーター停止時の移動方法

・防災備蓄の内容と保管場所

・マンションの場合は管理組合・管理会社の水害時の対応計画

全項目を事前に確認できるとは限りませんが、浸水想定が同程度の物件の比較で有効です。

避難先は災害の種類ごとに確認する

墨田区の指定避難所・水害時避難場所一覧は、「雨水出水」と「洪水・高潮」で利用可否を分けて掲載しています。近くに「避難所」があっても災害によっては避難不可なこともあります。候補物件ごとに対応する水害時避難場所を確認し、開設状況や、避難経路に河川、地下道、冠水しやすい場所などもないか確認しましょう。

墨田区の水害についてよくある質問

Q1 墨田区は水害リスクが高いので住まないほうがよいですか?

A1 区名で断定せず、候補住所と建物条件での確認が重要です。墨田区に水害リスクはありますが、区内でも場所によってリスクの程度が異なり、建物条件でも影響が変わってくるからです。水害リスクとそれ以外の諸条件とを比べて総合的に判断しましょう。

Q2 マンションの高層階なら水害を気にしなくてもよいですか?

A2 居室が浸水しない場合でも電気設備が被災すると、停電によって生活継続が難しくなります。居室階とあわせて設備の設置場所や非常用電源、防災備蓄を確認しましょう。

Q3 川から離れていれば浸水の心配はありませんか?

A3 川から離れていても雨水出水の確認が必要です。都の雨水出水浸水想定区域図は荒川の洪水とは別の想定です。候補住所を雨水出水の図にも重ねて確認しましょう。

Q4 近くの避難所へ行けばよいですか?

A4 墨田区は雨水出水と洪水・高潮で水害時避難場所の対応を分け、大規模な荒川氾濫のおそれがある場合は早期の区外広域避難を基本としています。最寄り施設だけでなく、その災害で利用できるか、避難経路を通れるかまで確認しましょう。

出典一覧

確認日:2026年9月27日