親の家を相続したら、売る・貸す・住む・解体のどれがいい?空き家・税金・登記の基本

2026年9月3日

親の家を相続したら、売る・貸す・住む・解体のどれがいい?空き家・税金・登記の基本

目次

親の家を相続するにあたって、「売る」「貸す」「自分や家族が住む」「解体する」のどれを選ぶのがよいか迷いやすいものです。判断するときは、家への思いだけでなく、相続人同士の合意、建物の状態、地域の需要、税金や登記、災害リスクまで同時に確認する必要があります。ここでは、それぞれの特徴と注意点を整理します。

親の家を相続したら、まず何を決めるべき?

誰が相続するのか

最初に確認したいのは、その家と土地を誰が相続するのかです。遺言書の有無を確認し、相続人が複数いる場合は遺産分割について話し合います。

不動産の相続登記は2024(令和6)年4月1日から義務化されました。「自分のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」の申請が原則です。2024(令和6)年4月1日より前の相続でも未登記なら対象となり、原則2027(令和9)年3月31日までの対応が必要です。 ただし、不動産を相続で取得したことを知った日が2024(令和6)年4月以降なら、その日から3年以内となる例外があり、時期によって期限が異なることに注意しましょう。

住む予定があるのか

自分や家族が今後住む可能性があるなら、売却や解体を急ぐ前に家族など関係者の意思を確認します。通勤・通学の利便性、生活環境、建物の広さ、今後の修繕費まで含めて考えましょう。誰も住む予定がない場合は、空き家の管理負担が続くため、売る・貸す・解体などの方針を決める時期も関係者で共有しておきましょう。

売る・貸す・解体する前に現状を確認する

まず、登記名義や抵当権、固定資産税、建物の劣化状況を確認します。古い家では、雨漏りや給排水設備、耐震性なども見ておきたいところです。

土地は、接道状況や再建築の可否、用途地域、周辺の売買・賃貸需要を確認します。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、取引価格や都市計画情報などを調べられます。

洪水、土砂災害、高潮、津波などは「ハザードマップポータルサイト」や自治体のハザードマップで確認できます。災害リスクは、住み続ける場合の安全対策だけでなく、売却や賃貸の条件を考える材料にもなります。

選択肢1 売る

メリット:現金化しやすい

売却の利点は、不動産を現金に換えられることです。相続人が複数いる場合も、売却代金を基準に分ける方法を検討しやすくなります。

古い家では「建物を残したまま売る」「建物を修繕して売る」「解体して土地として売る」で費用と売りやすさが変わります。先に解体すると後戻りできないため、複数社に査定を依頼して比較するとよいでしょう。

メリット:維持管理の負担を減らせる

家を保有している間は、固定資産税のほか、手入れ、換気、修繕、防犯などの管理が必要です。使う予定がない家なら、売却によって継続的な負担を減らせます。

また、空き家を適切に管理せず、市区町村から指導を受けても従わずに「管理不全空家」や「特定空家」として勧告を受けると、敷地の固定資産税などに適用される住宅用地特例が受けられなくなることがあります。

注意点:譲渡所得税や特例の確認が必要

相続した家を売って譲渡所得が生じると、所得税や住民税の課税対象になる場合があります。取得費や譲渡費用などで税額は変わるため、売却価格だけで手取り額を判断しないことが大切です。

一定の要件を満たす被相続人の居住用財産には、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。ただし、2024(令和6)年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋・敷地等を取得した相続人が3人以上の場合は上限2,000万円です。対象家屋、売却時期、売却価額、耐震性や取壊しなどにも条件があるため、適用可否は事前に確認しましょう。

選択肢2 貸す

メリット:家賃収入が期待できる

すぐに売らず、将来家族が住む可能性を残しながら活用したい場合は、賃貸も選択肢です。入居者がいれば家賃収入を得られ、維持費の一部をまかなえる可能性があります。

注意点:修繕費や空室リスクがある

賃貸に出せば必ず安定収入になるわけではありません。入居前の修繕、設備交換、退去後の原状回復などに費用がかかることがあります。空室中も固定資産税や管理費用は続きます。管理会社へ委託する場合の費用も含め、想定家賃から必要経費を差し引いた収支で考えましょう。

また、将来売却して「空き家特例」を検討する場合は事前に税制要件、特に譲渡所得からの控除特例を適用したときの金額もあわせて確認しましょう。

注意点:立地と建物状態で向き不向きが分かれる

周辺の賃貸募集状況、駅や生活施設へのアクセス、駐車場の有無、間取りなどを確認し、似た条件の物件と比較します。

大規模な修繕が必要なら、家賃収入で費用を回収できるかも重要です。賃料査定と修繕見積もりを取り、売却した場合とあわせて比べると判断しやすくなります。

選択肢3 自分や家族が住む

メリット:思い出や生活基盤を残せる

親の家に住めば、慣れ親しんだ家や地域とのつながりを残せます。ただし、土地を新たに買う必要がなくても、建物の状態によっては修繕や設備更新に費用がかかります。

注意点:リフォーム費用を確認する

築年数だけで判断せず、屋根や外壁、基礎、給排水、電気設備などを確認します。見た目がきれいでも、構造や設備に問題があれば費用が膨らむことがあります。将来の維持費や災害対策も含めて検討しましょう。

注意点:相続人同士の合意が重要

相続人のうち一人のみが住む場合は、他の相続人との財産配分も整理します。不動産を取得する人が他の相続人へ代償金を支払う方法などもあります。

共有名義にする場合は、将来の売却や大きな改修で調整が必要になることがあります。なお、将来売却して「空き家特例」を検討する場合は事前に税制要件、特に譲渡所得からの控除特例を適用したときの金額も含めて選択肢を関係者で話し合い、必要に応じて専門家に相談しましょう。

選択肢4 解体する

メリット:老朽化や倒壊リスクを減らせる

老朽化が進み、修繕して使う見込みが低い家では、解体が選択肢になります。建物を撤去すれば、倒壊や部材の飛散、防犯上の問題など、空き家を残すリスクを減らせます。ただし、残置物処分や建材の状況によって追加費用が生じることもあるため、見積もりでは工事範囲を確認しましょう。

注意点:更地にすると固定資産税が変わることがある

住宅の敷地には「住宅用地特例」があり、200平方メートル以下の部分では固定資産税の課税標準が6分の1となります。建物を解体して住宅用地でなくなると、この特例が適用されず、土地の固定資産税負担が増える場合があります。

そのため、「古い家だから先に壊す方が得」とは限りません。解体時期と売却時期、税負担を確認してから決めましょう。

注意点:売却や駐車場活用につなげる際は

将来の売却で「空き家特例」を検討する場合は、土地活用しようとする前に税制要件、特に譲渡所得からの控除特例などを確認しておきます。そのうえで、建物を撤去すると、土地として売却したり、条件が合えば駐車場など別用途に転用したりしやすくなる場合があります。ただし、解体後に必ず高く売れるとは限りません。

用途地域や接道条件、周辺需要を確認し、古家付きの査定と解体後を想定した査定を比べて判断しましょう。

まとめ 親の家は「お金」と「家族」と「土地条件」で考える

親の家を相続したとき、「売る・貸す・住む・解体する」のどれがよいかは一律には決められません。まず相続人と登記を整理し、建物状態、固定資産税、周辺の売買・賃貸需要、地域特性、接道条件や用途地域、災害リスクを確認しましょう。

そのうえで、売却価格や家賃だけでなく、修繕費、管理負担、税金、家族の希望まで含めて比較します。最終判断にあたっては、不動産会社に加え、登記は司法書士、税金は税理士、なにより自治体の窓口など、内容に応じた専門家へひとつひとつ確認しながら進めましょう。

よくある質問

Q1. 相続した実家はすぐ売った方がいいですか?

必ずしもすぐ売るのが正解ではありません。家族が住む可能性、建物状態、売却需要、税制上の特例を比較します。ただし、登記や空き家管理には期限や負担があるため、方針を決めないまま放置するのは避けましょう。

Q2. 古い家は解体してから売るべきですか?

物件によります。更地を求める買主が多い地域もあれば、古家付きで取引される場合もあります。解体後は住宅用地特例が外れる可能性もあるため、査定と税負担を確認してから決めます。

Q3. 相続人の一人が住む場合は何に注意すべきですか?

誰が不動産を取得するか、他の相続人との財産配分をどうするかを明確にします。共有名義にする場合は、将来の売却や改修も見据えて合意内容を整理しましょう。

Q4. 空き家のまま放置すると何が問題ですか?

老朽化、防犯、庭木、近隣への影響などの管理問題が起こりやすくなります。市区町村から指導を受けても従わずに管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、固定資産税などの住宅用地特例が受けられなくなることもあります。

参考文献

国税庁 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

法務省 相続登記の申請義務化 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html