「開かずの踏切」がなくなった街――高架化・再開発で変わる駅前を、住まい選びの視点で読む――

2026年5月25日

「開かずの踏切」がなくなった街――高架化・再開発で変わる駅前を、住まい選びの視点で読む――

目次

はじめに――「工事中の街」に住むべきか、待つべきか

竹ノ塚の連続立体交差事業完成、武蔵小杉のタワーマンション群の誕生、蒲田・川口・船橋の再開発計画——「工事中の街」はメディアで頻繁に取り上げられ、不動産市場でも注目を集めます。

「再開発エリアに引っ越したい」、「でも今は工事中で住みにくそう」、「完成後は家賃が上がりそう」……。

そんな迷いを抱える方は少なくありません。

この記事では、竹ノ塚を主な事例として取り上げながら、再開発が街をどう変えるのか、そしてどのタイミングで「住む・買う」の判断をすべきかを、住む側の視点から整理します。

「駅から徒歩何分が正解?」シリーズ第2弾で取り上げた竹ノ塚は、長年「開かずの踏切」という問題を抱えた街でしたが、高架化の完成によって街の姿が大きく変わりました。

その変化を実例として読み解きながら、再開発エリアへの向き合い方を考えます。

「再開発」とは何か:住む人にとっての意味を整理する

「再開発」という言葉はひとつの事業を指すわけではなく、いくつかの異なる行政・民間の取り組みを包括的に表す言葉です。 代表的なのは、①鉄道の連続立体交差事業(高架化・地下化)、②市街地再開発事業(主に駅前の大規模商業・住宅複合ビル建設)、③区画整理事業(道路・公園の整備を伴う宅地の再編)の3種類です。

高架化・地下化(連続立体交差事業)は、踏切の廃止による交通渋滞の解消と、鉄道によって分断されていた両側地域の連絡改善が主な目的です。 住む側のメリットは、踏切待ちのストレス解消、線路向こうへの買物・通勤のしやすさ向上、高架下に整備される商業施設による利便性向上です。 ただし、事業期間中は工事の影響で住民にとっては不便な時期が発生します。

市街地再開発事業や区画整理事業は、老朽化した建物が密集した地区の一体的な建て替えや、大工場などの跡地の利用による街の造りなおしによって現代的な商業・住宅・公共施設を整備するものです。 これが完成すると駅前の「顔」が一変し、利便性・安全性・防災性能が大きく向上します。 こちらも、事業期間中は工事の影響で住民にとっては不便な時期が発生します。

どの再開発であれ、住む人にとっての共通点は「完成後は便利になるが、その前には不便な時期がある」ということです。 「今がその不便な時期に当たるのか」「いつ完成するのか」を把握しておくことが、失敗しない判断の出発点です。

竹ノ塚の事例:高架化で何が変わり、何が残ったか

東武伊勢崎線(スカイツリーライン)の竹ノ塚駅周辺では、長年「開かずの踏切」として知られた踏切が問題でした。

複々線の地上線が走っていたため、朝晩のラッシュ時には踏切が長時間閉じたまま車も歩行者も渡れない状況が日常的でした。

2005年には踏切での死亡事故が発生し、高架化の要望が一気に高まりました。

2022年に東武伊勢崎線の高架線が完成し踏切は廃止されました。これにより東西の往来が自由になり、地域を分断していた「壁」がなくなりました。

高架下には「エキア竹ノ塚」という商業施設が整備され、カフェ・ドラッグストア・クリニックなどが入居。駅の使い勝手は以前とは別物といえるほど変わっています。

一方で、高架化後も整備が終わっていない部分が残っています。

東口のUR団地周辺の再開発はこれからが本番で、工事が本格化すると一時的な不便が生じる見込みです。

「高架化が終わったから完成」ではなく、「まだ街づくりの途中」という認識が正確です。

街の変化を見据えながら、「どの段階で住み始めるか」を考える必要があります。

竹ノ塚の今の状況は、「完成したばかりの利便性向上エリア」と「これから整備が進む期待エリア」が混在している状態です。

不動産価格という観点では、高架化完成後に価格が上昇した区間と、まだ再開発の恩恵が織り込まれていない区間が混在しています。どちらを選ぶかは目的次第です。


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工事中エリアに住むリスクと恩恵:数字で考える

工事中エリアに住む際の主なリスクは5つです。

①騒音・振動(特に夜間工事がある場合)

②工事車両による道路渋滞・歩道の狭さ

③商業施設の仮移転・閉店による生活利便性の低下

④建設現場の粉塵・泥汚れ

⑤工事期間の不確実性(予定より延びることが多い)

騒音・振動については、深夜・早朝作業は条例や行政指導で制限されているケースが多いですが、昼間の騒音はある程度許可されていることが多く、在宅ワーク中心の方には特に大きなストレスになります。

内見時に「現在の工事の範囲と時間帯」を必ず確認し、できれば平日昼間に現地を訪れて騒音の実態を体感してください。

一方、工事中エリアに住む恩恵もあります。

もっとも大きいのは「家賃・物件価格の割安感」です。街の評判が工事中で上がりきっていない時期は、完成後と比べて家賃が1〜2万円、売買価格で数百万円安いケースがあります。

賃貸なら「工事が完了するまでの数年間を割安家賃で住み、完成したら引っ越す」という戦略も成立します。

売買(購入)の場合は、完成前に行っておくことで完成後の資産価値上昇の恩恵を受けられる可能性があります。

ただしこれはあくまで「可能性」であり、再開発が計画通りに進まなかった場合や、完成後の商業施設テナントが期待外れだった場合などはその限りではありません。

不動産購入はリスクを取ってリターンを得ようとする行為、という基本を忘れないでおきましょう。

「完成後に買う」vs「工事中に買う」:判断の分岐点

どちらが「正解」かは、あなたの目的・時間軸・リスク許容度によって変わります。整理すると、次のようになります。

工事中に住む・買うのが向いている

①リスクを取ってコスト優位性を享受したい人

②数年後の街の変化を見越した長期投資目的の人

③騒音・不便を受け入れられるほど割安家賃に魅力を感じる人

完成後に住む・買うのが向いている

①確実に便利な環境で暮らしたい人

②再開発の中身が確認できてから判断したい慎重な人

③子育てや仕事の都合で環境の変化を避けたい人

判断のために必ず確認すべき情報は、①再開発計画の公式文書(区・市の公式サイトに掲載されていることが多い)、②完成予定時期とフェーズの進捗、③現在の騒音・工事の影響範囲(現地に足を運ぶのが確実)、④完成後の商業施設テナントの内定状況です。

これらを揃えた上で判断することで、「知らなかった」によるミスを防げます。

まとめ――再開発は「チャンス」か「ノイズ」か――答えは目的次第

再開発エリアへの住まい選びは、正解が一つではありません。

「工事中だから安い今が買い時」という人も「完成してから安心して入居したい」という人も、どちらの判断も合理的です。大切なのは、情報不足のまま感覚だけで動かないことです。

竹ノ塚の事例が示すように、再開発は「完成した瞬間が街のゴール」ではなく、「完成後もさらに整備が続くプロセス」であることが多いです。

高架化が終わっても駅前の区画整理や商業施設の整備が続く期間は、「完成したようで未完成」という状態が続きます。

住む前に「今のフェーズはどこか」を把握することが最初のステップです。

行政の公式情報・現地の状況・不動産相場の変化……、これらを組み合わせて自分なりの判断材料を揃えることが、再開発エリアを賢く選ぶ唯一の方法です。


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再開発編のQ&A

Q1. 再開発中のエリアに住むリスクはありますか?

A. 工事期間中は騒音・振動・工事車両による渋滞、商業施設の一時閉鎖などの不便が生じます。期間は数年〜10年以上になる場合もあります。一方で完成前は家賃・物件価格が割安な傾向があります。

Q2. 高架化が完成したら不動産価格は上がりますか?

A. 一般的に交通環境の改善・踏切廃止は周辺不動産の評価にプラスに働きますが、完成後すぐに大幅な価格上昇が起きるとは限りません。街全体の再整備スケジュールや商業施設の入居状況も影響します。

Q3. 竹ノ塚駅の高架化はいつ完成しましたか?

A. 東武伊勢崎線(スカイツリーライン)竹ノ塚駅周辺の連続立体交差事業は、高架線が2022年に完成し、踏切が廃止されました。

Q4. 再開発エリアを選ぶ際に確認すべきことは何ですか?

A. ①完成予定時期と計画の具体性、②現在の騒音・工事の影響範囲(現地確認が確実)、③周辺インフラの整備状況、④賃貸なら工事完了後の移転可能性も考慮することをおすすめします。