ハザードマップだけでは足りない——子育て世帯が知っておくべき「災害と学校」の関係
2026年5月25日

目次
はじめに――「家のリスク」は確認しても「学校のリスク」は?
住まいを選ぶ際にハザードマップを確認する人は、かつてと比べて増えています。
特に2019年の台風19号・2018年の西日本豪雨などの大規模水害を経て、「浸水リスクのある場所には住まない」という意識が広がりました。
しかし、見落としがちなのが「子どもが毎日通う場所」の災害リスクです。
自分の家が安全なエリアにあっても、子どもが通う小学校・保育園・学童がハザードエリアにある場合、大雨・洪水などの災害時に「家は安全だが、子どもが危険な場所にいる」という状況が生じる可能性があります。
本記事では、子育て世帯ならではの視点で「災害と学校」の関係を整理します。
浸水想定区域と小学校の分布の実態、学校が避難所になることの問題点、BCP(業務継続計画)の確認方法、そしてトチシルを使った事前確認の方法をお伝えします。
通学路・学校の災害リスクを見落としていないか
住まい選びでハザードマップを使う場合、多くの人は「自分が住む物件のある地点」だけをピンポイントで確認します。
しかし、お子さんが実際に生活するのは物件だけではありません。
子どもは通学路、学校・保育園・学童、習い事の施設など、さまざまな場所で時間を過ごします。
住む場所だけでなく、子どもが日常的に移動・滞在するすべての場所のリスクも把握すると、より安心をして住まい選びができます。
特に注意が必要なのは学校です。
小学校・中学校は地域の「指定避難所」に設定されているケースがほとんどです。
つまり、大雨・洪水・地震などの災害時には、地域住民が学校に避難してくることを前提にした設計になっています。
ここで注意したいのが、学校自体が浸水想定区域にある場合、避難所としての機能を果たせない可能性がある点です。
「学校に避難したのに、校舎の1階が浸水した」という事態は、大河川流域の低地に立地する学校では現実的にあるリスクです。
自治体によっては「校舎2階以上への垂直避難」や「浸水リスクが高い学校を避難所指定から除外する」などの対応を進めていますが、全ての自治体で完備できているわけではありません。
浸水想定区域と小学校の分布――首都圏の実態
国土交通省の「重ねるハザードマップ」(https://disaportal.gsi.go.jp)を使うと、洪水浸水想定区域と公共施設(学校・保育園など)を地図上に重ねて確認できます。
これを活用すると、東京・埼玉・千葉・神奈川の首都圏エリアでは以下のような実態が見えてきます。
東京の東部低地帯(足立区・葛飾区・江戸川区・墨田区・江東区・荒川区)は、荒川・江戸川・隅田川などの大河川が流れる低地に広がっており、想定最大規模の洪水では2〜10メートル超の浸水が想定される区域が広がっています。
この区域内に立地する小学校は少なくなく、「地域の避難所=小学校」が浸水エリアにある、という状況が複数確認されます。
埼玉県の荒川・元荒川・中川沿いのエリアや、千葉県の利根川・江戸川沿いのエリアでも同様のリスクが確認されています。
物件の候補を絞り込んだら、その地区の小学校がどの浸水深区域に含まれるかを確認することを強くおすすめします。
確認方法は「重ねるハザードマップ」で物件住所を検索し、①「洪水(想定最大規模)」のレイヤーを表示、②「学校」を施設レイヤーとして重ねて確認するという手順です。
地図が読みにくい場合は、自治体の防災担当窓口に「この住所の近くの小学校は浸水リスクエリアにありますか?」と問い合わせると教えてもらえます。
学校が避難所になる場合の問題点
学校が避難所に指定されている場合、災害時にその学校がどのように機能するかを把握しておくことが重要です。確認すべきポイントを整理します。
確認ポイント | 確認方法 | 重要度 |
|---|---|---|
学校自体の浸水リスク | 重ねるハザードマップ(国交省)で確認 | ★★★ |
指定避難所の種別(一般/福祉/広域) | 自治体の地域防災計画・避難所一覧 | ★★★ |
学校のBCP(事業継続計画)の有無 | 学校ホームページ・教育委員会へ問合せ | ★★☆ |
大規模災害時の児童引き渡しルール | 学校の配布資料・入学時の説明会 | ★★★ |
避難訓練の実施頻度と内容 | 学校ホームページ・懇談会 | ★★☆ |
広域避難場所の位置 | 自治体の避難場所マップ | ★★☆ |
*※ ★★★:最優先で確認推奨 ★★☆:余裕があれば確認推奨*
最も重要なのは「学校自体の浸水リスク」と「大規模災害時の児童引き渡しルール」です。
洪水発生時に学校が浸水するリスクがある場合、「子どもが学校にいる間に洪水が発生したらどうなるか」というシナリオを事前に学校と共有し、引き渡しの手順を確認しておくことが親として最低限の備えです。
学校のBCP(事業継続計画)とは、災害や感染症、停電、事故などの緊急事態が起きても、学校の安全確保と教育活動をできるだけ続けるための計画です。
文部科学省のガイドラインに基づき全国の学校に策定が求められていますが、内容の充実度には学校によって差があります。
「BCPを見せてもらえますか?」と学校に相談することは決して過剰な要求ではなく、保護者として正当な確認行為ですので、心配なようでしたら問い合わせてみましょう。
通学路のリスクも確認する
学校の立地だけでなく、毎日歩く通学路のリスクも確認しましょう。
1. 道路冠水しやすいアンダーパス(立体交差の低い部分) 2. 増水時に増水リスクがある小河川・水路沿いの道 3. 土砂災害警戒区域内の山際・崖下の道 4. 夜間に照明が少ない暗い通学路
これらは国土交通省の「重ねるハザードマップ」や各自治体のハザードマップで確認できますが、地図だけでは見落としやすいポイントもあります。
入学前に実際に通学路を歩いて、危険箇所がないかを確認すると良いです。
また、雨天時に一度歩いてみると、晴天時には見えなかった水はけの悪い箇所・冠水しやすい場所が見えてきます。
トチシルでハザード情報と学校を地図で重ねて確認する
トチシルでは、地図上にハザード情報と周辺施設(保育施設・学校など)を重ね合わせて表示できます。
「この保育園は洪水リスクエリアにあるか」「通学路はどのようなリスクの区域を通るか」を視覚的に確認したい際にご活用ください。
物件候補を絞り込んだ段階で以下の3点をトチシルで一括確認することを推奨します。
1. 物件周辺のハザードリスク 2. 最寄りの保育所・小学校のリスク 3. 通学路の大まかなルートとリスク
「安全な家に住んでいる」だけでなく、「子どもの日常全体が安全なエリアである」ことを確認してから、住まい選びの決断をしましょう。
ハザードマップと学区をトチシルの地図で重ねてみる

まとめ――子どもの安全を「家の外」まで確認しよう
住まいの災害リスクと、子どもが毎日通う場所の災害リスクを確認することは、セットで行うべき作業です。
「家は安全だけれども、学校が危険なエリアにある」という状況では、子育て世帯にとってより深刻なリスクになりかねません。
ハザードマップは「入口」に過ぎません。
学校・保育園・通学路のリスクまで含めて確認し、BCP・引き渡しルール・広域避難場所も把握した上で、安全・安心で納得のいく住まいを選んでください。
防災準備は「住み始めてから」でも遅くはないですが、住まい選びの段階で把握しておくと、引っ越し後の備えや家族内のコミュニケーション(「大雨の時はここに逃げる」「学校からの引き渡しはこの手順で」)がより具体的で明確になります。
ハザードマップと学区をトチシルの地図で重ねてみる







